いわしののパレルモ風香草焼き
~Sarde a beccafico alla palermitana~
カトリック教会の暦には、キリスト降誕祭に加え365日の暦上、教会が公式に信仰の模範とする「聖人」たちの名前を連ねています。キリストの養父、大工のジュゼッペもその一人で、3月19日の聖ヨセフ(サン・ジュゼッペ)の日であります。カトリックの国では、この日を『父の日』として祝います。
さて、今回ご紹介するのはちょうどサン・ジュゼッペにもよく作られるシチリア料理です。この料理名のbeccaficoは、イチジクの実をついばむ野鳥で和名をニワムシクイというそうです。料理名に使われた由来にも様々ないわれがありますが、くるっと巻きつけたイワシの尾がピンと立ち上がって、間にはさむ月桂樹の深緑の葉の間から旬のオレンジの実をつついてるようにも見えて、ビジュアル的にも春らしい一皿です。
材料:最少で作りやすい目安2人分
- 鮮度のいいSarde 6~8尾(1尾あたり20~30g)
- 月桂樹(できれば新鮮な葉) 4枚
- オレンジ 半個 / 塩・胡椒 適宜
詰め物:玉葱 50g / にんにく 1片 / アンチョビ 1枚 / イタリアンパセリ 1枝 / レーズ ン 大さじ1 / パン粉 30g / アーモンド粒 大さじ1 / エキストラ・ヴァージン・ オリーブオイル(以下EVOと記す) 大さじ½
衣:パン粉 40g / イタリアンパセリ 1枝 / にんにく 1片 / EVO 大さじ1 / あればタイ ムの枝1本または乾燥一つまみ
作り方:
-
鰯の処理をします。表面を傷めないように、優しく鱗を落とします。頭部からエラを指でつまみながら、腹部側へゆっくり引っ張ると腹わたがツルッと出てきます。流水の下で残った内臓物と血合いを綺麗に洗ったら、指の先を使い、腹部から背骨に沿って開いていきます。片側が開いたら、背骨をもう一方の身からゆっくり外し、尾の付け根で折って切り離します。(背骨は、カリカリになるまで焼いたり、揚げたりすれば美味しく食べられます。)おろした身には、うっすらと立て塩を振って臭み抜きをしておきます。
- 詰め物を用意します。アーモンドは刻んだり、袋の中に入れてスリコギなどで粗く潰します。玉葱とにんにくをみじん切りにし、EVOを透き通るまで弱火で炒め、アンチョビを加え身が崩れてくるまで炒めたら、先のアーモンドとレーズンを軽く炒め、パン粉を入れたら色づくまで加熱し、最後にみじん切りしたパセリと大さじ1強の水を加えて全体をまとめ、器に取り出し広げて冷まします。
- 衣になる香りパン粉を準備します。にんにくは、フォークの背でつぶしてパン粉に絡みやすい細かさにします。パセリのみじん切り(あればタイムの葉を枝からこそげ落として)も加え、EVOが衣全体に浸透するように擦り合わせます。うっすらと萌黄色になるほどに。
- 1.の鰯に2.の詰め物をしていきます。鰯のカマ部分に詰め物をのせ、尾に向かってくるりと巻いて、爪楊枝などで止めます。ここへ3.の衣をまんべんなくつけて、耐熱皿におき、塩・胡椒を軽くし、EVOも一筋かけて予熱した180℃のオーブンへ入れて15~20分程焼きます。串刺しにして、スライスしたオレンジと生の月桂樹の葉を挟むと、全体がまとまり香りも鰯の身に閉じ込められます。
イタリア料理らしいシンプルでいて、彩り鮮やかなピアットとなったでしょうか。
作り方:
- 片口鰯は、上記の方法で手開きにし、ボウルに貼った塩水で洗い、水分を切っておきます。
- Finocchio selvaticoは、パスタを茹でる鍋にお湯を沸かし、一つまみの塩を入れてさっと茹でます。ザルに取りみじん切りにしておきます。この香草の香り一杯の茹で汁に、塩を加えBucatiniを茹で始めます。(パスタ100g:1ℓの水:大さじ1の塩加減)
- 同時進行でフライパンに、EVOとみじん切りにしたにんにくとアンチョビを入れて香りがでたら、1.の片口鰯を入れさっと火を通して取り出します。同じフライパンに、松の実とレーズンを加え炒めたら、サフランの粉と一緒に2.の茹で汁をお玉に一杯分注ぎ入れ、黄色に染まったところでfinocchio selvaticoのみじん切りも加えさっと混ぜます。
- 別のフライパンでパン粉がきつね色に色づくまでさっくり炒めて、予熱で火が通りすぎないようこうちらも取出しておきます。
- 2.のBucatiniを表示に従ってアルデンテに茹で上げたら、3.のフライパンへ投入よくソースを絡めます。水分が足りなければ茹で汁で調整します。最後に3.の片口鰯と4.のパン粉を絡めて、熱々のお皿に盛り付けます。
青魚の中でも最も大衆魚ですが、イワシ酸は生きた栄養剤、SardineもAliciも海に囲まれた国に住む私たちは鮮度の良いものに会う機会も多く、大変有難いものです。日本では、『土佐日記』の中で、節分の夜、鰯の頭をヒイラギの枝に突き刺して、厄病や災厄を追い払っていた風習が古くからあったそうですが、春の産卵期に漁獲される鰯を食べて、今年も健やかな一年にしていきたいですね。
~ I piatti sono pronti e buon petito ~
《協力 :後藤知美さん》